フラワーデモ沖縄・上野さやか
2016年5月、米軍属によって命を奪われた女性への追悼集会を開催しました。過重な基地負担のある沖縄では、これまでも米兵等による性暴力が明るみになった際には集会が開かれていましたが、私たちがこの時選んだ方法は、これまでの集会にあったシュプレヒコールやガンバロー三唱のない集会でした。追悼への想いを黒い服に身を包んだ参加者が、声のかわりに揚げたのは、卑劣な行為に対する抗議のメッセージと沖縄では昔から死者の魂が宿るといわれているハーベール(蝶)のイラストを描いたプラカード。これまでにあまり行われていなかったサイレントな抗議集会に、戸惑った参加者の中には「なぜ声を上げないんだ」と言ってくる方もいましたが、沈黙の行動を私たちは続けました。それは、声を上げることすらできなくなってしまった被害者、そして、あげたくてもあげることが出来ない多くの性被害者の想いを知っていたからです。
あれから3年後の2019年4月に東京と大阪で開催されたフラワーデモ。それは、2016年に私たちが開催した被害者に寄り添う集会と重なっているように感じました。沖縄でも開催出来たらと思いながらも、毎月継続して開催していくことへの不安の気持ちが大きかったのですが、これまでにも活動を共にしてきた仲間のチカラも加わり、決意することが出来ました。わずか10日ほどの準備期間でしたが、初開催のフラワーデモin沖縄には想像を超える200人以上の方が参加してくれました。
以降、今月で4年目を迎えますが、沖縄の会場でも多くの方がスピーチをしてくださいました。身近な人から、米兵等から、50年前に起きたことをはじめて語ってくれた女性。性被害によって命を落とした家族の方。人前でスピーチをするのもはじめてという10代の男性は、性犯罪を許さず、誰かのチカラになりたいと伝えてくれました。会場以外の場でも、沖縄に旅行で来た時に起きた性暴力についてDMをくださった方もいます。この4年で多くの方と出会いましたが、1度しか会えなかった方で忘れられない人がいます。
「自分なんて大したことない」と隣で呟いていた彼女。その一言が気になり集会の後、声をかけ、話をすると彼女が「大したことではない」と思わされている人だと気づくことが出来ました。その頃、米兵からの性暴力事件が起き、連日抗議の声が上がり、マスコミで報道されていました。加熱する報道を通して彼女は、自分に起きた被害と基地関連の被害を天秤にかけて、報道もされない自分の被害は「大したことはない」と考えようとしているんだと気づきました。ただお話をすることしかできませんでしたが、彼女が勇気を出して会場に来てくれたことで、沖縄で暮らす私たちの日常に気付かされた日でもありました。
今年、沖縄は本土復帰から50年度迎えました。テレビでも沖縄に関する特番が多く制作され、県内外から発信される情報は時にお祭りムードの様に感じます。しかし、現実は、本土復帰後も全国面積の0.6%の沖縄に米軍専用施設の70%以上が集中し続け、米兵による事件事故が相次ぎ、大々的に報道もされます。一方、性暴力の被害は身近な人との関係、日常の中で起きていることの方が多いのも事実です。加害者が誰であれ、暴力は許さない。フラワーデモでは、人権侵害である性暴力に対し抗議の声をあげ続けていきます。それは、沖縄の平和運動がずっと貫いてきた非暴力という方法で。そして連帯していきます。沖縄で起きている問題は、沖縄だけの問題ではなく、日本全体、世界全体に起きている身近な問題であると知っているから。
「あなたは悪くない」「わたしだったかもしれない」「あなたと共にいるよ」その気持ちを共有する仲間と共に、今日もここでフラワーデモを開催します。
2022年8月 フラワーデモin沖縄
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